長崎電気軌道1

長崎電軌(1)

撮影：1968～2003年　制作：2023/1
山腹に広がる住宅地を背景に、小型の電車が走ります。　2003/6/1, 大浦海岸通

坂の街、長崎には全長11.5kmの路面電車があり、市民だけでなく多くの観光客にも親しまれています。運営は長崎電軌軌道、開業は1915(大正４)年、軌間は標準軌の1,435mmです。運行系統は下記の４系統です。 [1] 赤迫～長崎駅前～築町～西浜町～正覚寺下 [3] 赤迫～長崎駅前～公会堂前～蛍茶屋 [4] 蛍茶屋～公会堂前～正覚寺下 [5] 蛍茶屋～西浜町～石橋
	半世紀以上前の長崎駅前です。歩道橋に上ると、小型の300形がすれ違う光景に出会いました。この写真は今でも同じ構図で撮ることが出来ますが、電車やバス、それに乗用車がすっかり変わっています。 1968/3/18, 長崎駅前
	上掲と同じ300形を横から撮影しました。車体更新前の姿なので、冷房装置が無く、集電装置には直線的なビューゲルが使われていました。車体更新後は方向幕に行き先と系統番号を表示するようになったので、前面の大きな系統板は使われなくなりました。 1968/3/18, 西浜町
	西浜町の交差点を直進する[5]系統の501号です。角張った外観が特徴です。1966年製なので、撮影時の最新鋭車両でした。左の364号は右折のために停車中の[1]系統です。ちょっと見にくいのですが、行き先が思案橋になっています。撮影の2ヶ月後に正覚寺下(現崇福寺)まで延長されています。
	浦上車庫の構内です。ここに写っている車両はほとんどが車体更新を受け、50年経った現在も現役で活躍しています。中央の372号は、1981年に始まった冷房化改造の第1号です。 1971/8/8, 浦上車庫 ※以下の白黒写真は全て同日、同所で撮影
	庫内に並ぶ215号と305号です。このグループは戦前の木造車を置き換えるために、戦後間もない1950年から1953年にかけて合計26両が造られました。全長11mの小型車で、撮影時の主力型式でした。
	1911(明治44)年生まれの木造ボギー車167号です。元西鉄福岡市内線の106号で、1959年に長崎電軌へ転籍しました。撮影の2年後に廃車されましたが、僚友車の168号が保存されています。 ※西鉄福岡市内線の100形は津島軽便堂写真館様のページをご参照下さい。
	元東京都電2021号の704 号です。細身のボディが特徴的ですが、これは元々軌間1,067mmの都電杉並線で使用されていたためです。同線の廃止後は都電一般仕様の1,372mmを経て、長崎の1,435mmへと2度改軌されています。
	散水車として使用されていた101号です。貴重な2軸の単車ですが、経歴は不明です。
	ここからは2003年の撮影です。 [5]系統の終点、石橋です。近くに大浦天主堂やグラバー園などがあります。 2003/6/1, 石橋 ※以下撮影日は全て同日です。
	[5]系統は石橋を出ると、大浦川に沿った大浦石橋通りを走ります。この道路は比較的狭いので、大浦海岸通まで単線区間です。大浦天主堂下
	上掲と同じ場所で、電停間近の様子です。余談ですが、奥が石橋方面なのに運転士が乗って手前に動いていることから、方向幕の表示間違いだと思われます。
	国道499号線の広い道へ出てきました。ここから先は複線になります。近くにオランダ坂などの観光地があります。大浦海岸通
	東の終点、蛍茶屋に通じる新長崎街道(日見バイパス)の坂道です。1989年に道路拡幅工事がおこなわれ、線路の移設とセンターポール化が完成しました。新大工町～新中川町
	上掲のすぐ南、新大工町の電停です。長崎では軌道敷内の通行が原則禁止で、電停には屋根を付けるなど利用者にやさしい施策が徹底されています。撮影に使った歩道橋は長崎玉屋デパートに直結していましたが、同店が閉店した時に撤去されました。
	上掲の近くで、反対側を見ています。背景の山並みの左奥に、江戸時代に開かれた旧長崎街道の日見宿があります。車両は博多～長崎を走る九州急行バス・九州号の全面広告車、1202号です。新大工町～諏訪神社前
	ここからは北の終点、赤迫で撮影した代表的な車両の写真をご覧に入れます。これは200形の増備車で、1951年製の211形です。基本性能や外観は200形と変わりません。1985年に冷房化され、近代的な姿になりました。 2003/6/1, 赤迫
	360形は全長11mの小型車ですが、ワンマン化を考慮して左右非対称の扉配置になっています。1961年製で、それまでの半鋼製車体に代わり、全金属製になりました。集電装置には登場時からZパンタが使われています。
	上掲と同じく、360形です。長崎電軌は日本で初めて全面広告電車を走らせたことで知られています。
	1980年代に各都市で路面電車の復権を目指して、いわゆる軽快電車が試作されました。長崎にも2000形と呼ばれる軽快電車が登場しましたが、残念ながらその写真はありません。この1700形は軽快電車の車体デザインを採用しているものの、台車や制御装置には廃車になった旧型車のものを流用しています。
	台車や電動機などに旧部品を流用し、車体を新造した車両には1200～1800形に至る22両があります。その最後のグループとなるのが2000年に登場した1800形です。いわゆる軽快電車風の外観とは大きく異なり、前面に曲面ガラスを採用したデザインになりました。制御装置もワンハンドルタイプの新造品です。
長崎電軌(2)に続きます。