名鉄岐阜市内線

撮影：1969～2005年　制作：2021/8

かつて岐阜には名鉄の岐阜市内線があり、岐阜駅前と忠節の間を路面軌道で結んでいました。ここは西のターミナル・忠節です。ここから先が揖斐・谷汲方面への郊外電車になります。
1969/5/29, 忠節

忠節駅のホームで電車を待つ、下校時の高校生達です。この時代の高校生は、皆白線入りの制帽を被っています。
　

同じく忠節駅です。新岐阜方面からの市内線電車が到着しました。
車両は560形562号。元北陸鉄道金沢市内線の2200形で、左右非対称のドア配置が特徴的です。この写真は撮影日が比較的新しいので、ビューゲルがZパンタに変わっています。
1977/3/27, 忠節

忠節橋の北側ですれ違う560形(右)と570形(左)です。570形は東京都電の6000形をそっくりコピーして、1950～54年に造られました。橋の北詰に手頃な歩道橋を見つけ、俯瞰撮影しています。
1969/5/29, 早田～西野町

上掲の560形が忠節橋を渡るところです。忠節橋はブレースドリブ(カンチレバー)タイドアーチ構造の鋼鉄橋で、戦後間もない1948年に建造されました。この構造の橋は日本に4例しかなく、優美な姿を誇っています。

同じく忠節橋を渡る510形です。1926年の製造で、丸窓電車として市民やファンから親しまれていました。
　

目の前を丸窓電車が走り抜けていきます。

1967年に登場した市内線から揖斐線へ直通する急行電車です。当時は市内線を単行で走り、忠節から先が2両運転になっていました。

徹明町の交差点を岐阜駅方面に向かう560形です。
1969/5/29。

徹明町の交差点から北の方向を見ています。写っているのは長良線です。長良線は1988年5月末日をもって廃止されましたが、沿線に柳ヶ瀬や市役所、金華山などがあり、市内線のメインルートでした。この電車に乗って、子供の頃に長良川の花火大会へ行ったことを良く覚えています。このような大切な路線を廃止するとは、狂気の沙汰としか思えません。
1969/5/29

長良線の終点近くの風景です。市内方面へ向かう557号がやってきました。道路が狭いため、軌道は東側に寄せて敷設されていました。クルマが自由に軌道敷内を通行した結果、悲惨な線路状態になっています。清酒富久娘の看板は、当時の人気女優佐久間良子さんです。
※現在は道路が拡幅されているので、往事をしのぶものは何も残っていません。
1969/5/29, 鵜飼屋～長良北町

1967年に北陸鉄道の金沢市内線が廃止になり、不要となった2000形10両が名鉄に譲渡されて550形の550～559になりました。550形は全長10.5mの小型車で、急カーブの多い長良線に充当されました。558号が終点の長良北町から出発するところです。

終点の長良北町で停車中の550形、555号です。1960年までは、この先の高富まで路線が延びていました。右が市内方向で、背景に岐阜城を戴く金華山が見えます。
1969/5/29

ところ変わって新岐阜の駅前です。上掲で紹介した長良北町に向かう555号が写っています。多くの乗降客があるターミナルにも関わらず、乗り場には安全地帯がありません。
1969/5/29

520形の523号です。510形が2段の側窓であるのに対して、520形は1段窓のスタイルです。改番のため車両番号は510形より大きくなってますが、こちらの方が古くて1923年製です。製造当初は戸袋窓は丸窓だったそうです。
石造りの十六銀行本店は1931年の竣工、繊維産業で栄えた頃を彷彿とさせる街並みの中を大正時代の電車が走ります。
1972/11/4, 新岐阜駅前

名鉄新岐阜駅前から国鉄の岐阜駅前へ曲がる所です。国鉄駅前には多くのビルが壁のように並んでいて、賑やかな様相を呈していました。手前のビルにはボウリング、ビリヤード、碁会所、サウナ、パチンコ、キャバレーなどの遊興施設が揃っていて、屋上にはビアガーデンがありました。
車両は丸みを帯びたオデコが特徴的な570形の575号です。
1969/5/29

岐阜駅前の電停です。市内線では唯一、ここには安全地帯がありました。理由はよく分かりませんが、後年になってこの電停はほとんど使われなくなり、多くの電車が新岐阜駅前での折り返しとなりました。
車両は560形の564号です。撮影時はビューゲル集電で、向きを変えるためのロープが運転台から伸びています。
1969/5/29

上掲の白黒写真から36年後に、岐阜の街を再訪しました。車両は見違えるほど新しくなりましたが、相変わらず乗り場に安全地帯はありません。乗降時にはステップが出てきます。市や県は路面電車の価値をほとんど理解せず、交通上の単なる邪魔者と思っていたようです。
車両はVVVFインバータ制御の780形、1997～98年にかけて7両が配備されました。困難な状況下にも関わらず、最新鋭の車両を市内線/揖斐線に投入した名鉄の意気込みが感じられます。残念なことに2005年3月末をもって、市内線・揖斐線・美濃町線の全線が廃止されました。
2005/2/5, 新岐阜駅前

忠節橋を渡る770形の785号です。こんな素晴らしい光景が、当局の無知と無理解によって無くなってしまいました。
2005/2/27, 早田～西野町

市内線の軌道と同じ日に、岐阜の市営バスも廃止になりました。忠節橋を渡る在りし日の市バスの勇姿です。緑を基調にしたカラーリングの後方に、鵜が描かれています。
※忠節橋で市バスの写真を撮っている人は、誰一人見かけませんでした(笑)。
2005/2/27, 忠節橋～西野町