函館市電

撮影:1968～2007, 制作:2021/2, 改訂:2023/11

北海道には2つの路面電車が現存します。1つが前作の札幌市電、もう1つが今回ご紹介する函館市電です。
明治の末期まで函館市内の交通は、函館水電が運営する馬車鉄道が担っていました。1913年(大正2年)に同社が東雲町～湯川を電化、この年が路面電車の開業年になります。1943年、陸運統制令によって函館市が電車事業を運営するようになりました。最盛期には17.9kmの路線網がありましたが、残念なことに近年は乗客の減少が続いて多くの路線が廃止され、営業キロ数は10.9kmになっています。

1972/1/4, 五稜郭駅前

箱館山から眺める日本三大夜景　2006/5/11

五月に花見ができる聖ハリトリス協会

函館市電の路線図をGoogle Mapsの上に書き込みました。赤線が現在の路線、緑線が訪問後に廃止された路線です。
　五稜郭駅前～ガス会社前：1978年11月廃止
　松風町～宝来町：1992年4月廃止
　五稜郭公園前～ガス会社前～函館駅前：1993年4月廃止

		1968年、国鉄の連絡船に乗って初めて函館を訪問した時の写真です。多くの人々が市電を利用して、繁華街へ出掛けていました。 500形は戦後間もない1948年から50年にかけて造られた、定員80名の大型ボギー車です。全部で30両が導入されました。 1968/8/4, 十字街
		[4]系統は五稜郭駅前と函館ドック前を結んでいました。車両は1959年から61年にかけて造られた710形です。全部で14 両あります。側面に大きな立席窓を持つ近代的なスタイルで、間接自動加速制御方式を採用しています。
		十字街の三叉路を曲がる801号です。側面に「ガス会社まわり」の表示が見えます。 800形は1962年から65年にかけて造られました。外観、大きさは710形とほとんど変わりませんが、間接非自動制御方式です。合計12両のうち10両は、前扉が1枚の引戸になっています。
		800形同士の並びです。函館駅前の交差点から南西方向を見ています。右は[3]系統で、湯の川からガス会社まわりの十字街行きです。左は同じくガス会社まわりで、函館駅前で折り返す区間系統です。右端で電車を待つ家族の姿に、時代を感じますね。 1968/8/4, 函館駅前
		戦前の1936年(昭和11年)に造られた単車の300形です。地元の函館船渠(ドック)製です。 1968/8/24, 十字街
		ここからは1972年の撮影です。まっすぐに延びる国道5号線の上に、国鉄五稜郭の駅前まで市電の線路が敷設されていました。写真の[10]系統は、南行きが五稜郭駅前→松風町→宝来町→十字街→函館ドック前の経路ですが、帰りの北行きは十字街→函館駅前から直接五稜郭駅前に戻る変則の循環運転になっていました。 1972/1/4, 五稜郭駅前 ※函館ドック前は、現在の函館どつく前です。左に写っているのは函館市営バスです。2003年4月に交通局は市バス事業から全面的に撤退しました。
		五稜郭駅前で待機する[8]系統です。上掲の[10]と逆回りで、南行きが最短コースで函館ドック前へ向かいます。車両は元東京都電の7000形で、1955年製です。1970年に10両が函館市に譲渡されて1000形となりました。都電と函館市営がともに軌間1,372mmであるため、台車を改造することなく使用できました。このゲージ規格は馬車鉄道時代の名残りと言われています。冒頭の写真もここで撮影しました。
ここからは、2007年に撮影したカラー写真になります。函館港を望む八幡坂の中腹から、眼下を走る市電を撮影しました。　2007/5/11, 十字街～末広町
		函館駅前の交差点を曲がる[5]系統です。右が松風町方向になります。左奥がかつてガス会社方面へ直進していた線路があった国道5号線です。車両は1993年製造の3001号です。北海道の路面電車としては初の冷房と回生ブレーキを備え、VVVFインバータ制御の軽快電車です。交通事業健全化計画によって、一部路線の廃止と新車の導入が、同時に行われました。 2007/5/11, 函館駅前
		十字街から西へ進む[5]系統です。古参の710形が使われていました。1959年製なので、撮影時すでに48年を経過しています。左の建物は旧安田銀行(のちの富士銀行)函館支店です。1932年の竣工で、現在ではホテルとして使われています。 2007/5/12, 十字街～末広町
		終点の湯の川に到着した[2]系統です。車両は3004号で、JRA函館競馬場のラッピングが施されていました。 2007/5/12, 湯の川
		周囲を圧倒する函館中央病院を背景に走る[2]系統です。中央病院は1930年(昭和5年)から当地の医療に貢献しています。車両は旧800形を車体更新した8000形で、1990年から97年にかけて10両が造られました。中央病院前～千代台
		十字街の交差点を曲がる[2]系統です。この系統にも710形が使われていました。 2007/5/11, 十字街
		[2]系統のハイライト区間、通称ロマンス坂と呼ばれる急勾配です。多くの映画やTVのロケ地に使われ、パワースポットとして観光客に人気があります。勾配は53‰、角度に直すと約3 度になります。 2007/5/12, 青柳町
		終点の谷地頭からロマンス坂を上ってくる[2]系統です。近くには函館八幡宮や立待岬などの名所があります。谷地頭～青柳町
		車椅子対応として造られた8101 号のサイドビューです。2002年に旧800形を車体更新して製造されました。中央扉付近のみが低床構造になっています。車内に段差があるので使いにくく、改造は1両にとどまりました。 2007/5/12, 函館駅前
		2007年に登場した低床式連接車の9601号、愛称らっくる号です。アルナ車両のリトルダンサータイプC2で、連接部に台車のない2車体2台車構造になっています。ドームのある建物は旧丸井今井百貨店です。1923年(大正12年)に建てられました。左に立っているのは線路の分岐操作を行なう操車塔で、1995年まで現役で使われていました。現役時の設置場所は道路の向かい側にあり、保存のために移設されています。 2007/5/12, 十字街
		レトロ電車「函館はいから號」です。1993年の市制70周年記念で、除雪車として使われていた車両を旅客用に復活しました。元は、千葉県の成宗電気軌道が1910年(明治43年)に導入した車両ですが、同社の経営不振によって1918年に当時の函館水電に譲渡されたものです。吹きさらしの運転台は、北海道では厳しいですね。 2007/5/11, 末広町～大町
		古めかしい洋館の前を、レトロ電車が走ります。まさに大正ロマンの世界です。この建物は1913年(大正2年)に建てられました。1863年(文久3年)に当地で創業した相馬(株) の現役社屋です。末広町～大町
		「はいから號」の車内です。木の香りがする内装と天井の白熱灯に暖かさを感じます。女性の車掌さんも乗務しています。
		ラッピング車両の3001号が、夜のカーブを通過していきます。後方に広告主の函館支店が見えます。 2007/5/12, 函館駅前
参考文献：　函館市企業局交通部「事業の沿革」2023/4/1

		1968年、国鉄の連絡船に乗って初めて函館を訪問した時の写真です。多くの人々が市電を利用して、繁華街へ出掛けていました。 500形は戦後間もない1948年から50年にかけて造られた、定員80名の大型ボギー車です。全部で30両が導入されました。 1968/8/4, 十字街
		[4]系統は五稜郭駅前と函館ドック前を結んでいました。車両は1959年から61年にかけて造られた710形です。全部で14 両あります。側面に大きな立席窓を持つ近代的なスタイルで、間接自動加速制御方式を採用しています。
		十字街の三叉路を曲がる801号です。側面に「ガス会社まわり」の表示が見えます。 800形は1962年から65年にかけて造られました。外観、大きさは710形とほとんど変わりませんが、間接非自動制御方式です。合計12両のうち10両は、前扉が1枚の引戸になっています。
		800形同士の並びです。函館駅前の交差点から南西方向を見ています。右は[3]系統で、湯の川からガス会社まわりの十字街行きです。左は同じくガス会社まわりで、函館駅前で折り返す区間系統です。右端で電車を待つ家族の姿に、時代を感じますね。 1968/8/4, 函館駅前
		戦前の1936年(昭和11年)に造られた単車の300形です。地元の函館船渠(ドック)製です。 1968/8/24, 十字街
		ここからは1972年の撮影です。まっすぐに延びる国道5号線の上に、国鉄五稜郭の駅前まで市電の線路が敷設されていました。写真の[10]系統は、南行きが五稜郭駅前→松風町→宝来町→十字街→函館ドック前の経路ですが、帰りの北行きは十字街→函館駅前から直接五稜郭駅前に戻る変則の循環運転になっていました。 1972/1/4, 五稜郭駅前 ※函館ドック前は、現在の函館どつく前です。左に写っているのは函館市営バスです。2003年4月に交通局は市バス事業から全面的に撤退しました。
		五稜郭駅前で待機する[8]系統です。上掲の[10]と逆回りで、南行きが最短コースで函館ドック前へ向かいます。車両は元東京都電の7000形で、1955年製です。1970年に10両が函館市に譲渡されて1000形となりました。都電と函館市営がともに軌間1,372mmであるため、台車を改造することなく使用できました。このゲージ規格は馬車鉄道時代の名残りと言われています。冒頭の写真もここで撮影しました。
ここからは、2007年に撮影したカラー写真になります。函館港を望む八幡坂の中腹から、眼下を走る市電を撮影しました。　2007/5/11, 十字街～末広町
		函館駅前の交差点を曲がる[5]系統です。右が松風町方向になります。左奥がかつてガス会社方面へ直進していた線路があった国道5号線です。車両は1993年製造の3001号です。北海道の路面電車としては初の冷房と回生ブレーキを備え、VVVFインバータ制御の軽快電車です。交通事業健全化計画によって、一部路線の廃止と新車の導入が、同時に行われました。 2007/5/11, 函館駅前
		十字街から西へ進む[5]系統です。古参の710形が使われていました。1959年製なので、撮影時すでに48年を経過しています。左の建物は旧安田銀行(のちの富士銀行)函館支店です。1932年の竣工で、現在ではホテルとして使われています。 2007/5/12, 十字街～末広町
		終点の湯の川に到着した[2]系統です。車両は3004号で、JRA函館競馬場のラッピングが施されていました。 2007/5/12, 湯の川
		周囲を圧倒する函館中央病院を背景に走る[2]系統です。中央病院は1930年(昭和5年)から当地の医療に貢献しています。車両は旧800形を車体更新した8000形で、1990年から97年にかけて10両が造られました。中央病院前～千代台
		十字街の交差点を曲がる[2]系統です。この系統にも710形が使われていました。 2007/5/11, 十字街
		[2]系統のハイライト区間、通称ロマンス坂と呼ばれる急勾配です。多くの映画やTVのロケ地に使われ、パワースポットとして観光客に人気があります。勾配は53‰、角度に直すと約3 度になります。 2007/5/12, 青柳町
		終点の谷地頭からロマンス坂を上ってくる[2]系統です。近くには函館八幡宮や立待岬などの名所があります。谷地頭～青柳町
		車椅子対応として造られた8101 号のサイドビューです。2002年に旧800形を車体更新して製造されました。中央扉付近のみが低床構造になっています。車内に段差があるので使いにくく、改造は1両にとどまりました。 2007/5/12, 函館駅前
		2007年に登場した低床式連接車の9601号、愛称らっくる号です。アルナ車両のリトルダンサータイプC2で、連接部に台車のない2車体2台車構造になっています。ドームのある建物は旧丸井今井百貨店です。1923年(大正12年)に建てられました。左に立っているのは線路の分岐操作を行なう操車塔で、1995年まで現役で使われていました。現役時の設置場所は道路の向かい側にあり、保存のために移設されています。 2007/5/12, 十字街
		レトロ電車「函館はいから號」です。1993年の市制70周年記念で、除雪車として使われていた車両を旅客用に復活しました。元は、千葉県の成宗電気軌道が1910年(明治43年)に導入した車両ですが、同社の経営不振によって1918年に当時の函館水電に譲渡されたものです。吹きさらしの運転台は、北海道では厳しいですね。 2007/5/11, 末広町～大町
		古めかしい洋館の前を、レトロ電車が走ります。まさに大正ロマンの世界です。この建物は1913年(大正2年)に建てられました。1863年(文久3年)に当地で創業した相馬(株) の現役社屋です。末広町～大町
		「はいから號」の車内です。木の香りがする内装と天井の白熱灯に暖かさを感じます。女性の車掌さんも乗務しています。
		ラッピング車両の3001号が、夜のカーブを通過していきます。後方に広告主の函館支店が見えます。 2007/5/12, 函館駅前
参考文献：　函館市企業局交通部「事業の沿革」2023/4/1