上海の新交通システム・浦江線

Shanghai / China

撮影: 2018/7, 制作: 2018/11

2018年3月、上海初のAPM・浦江線が開業しました。APMとは、Automated People Mover の略で、ゴムタイヤで走る無人運転の中量輸送システムのことです。APMとは聞き慣れない言葉ですが、日本では新交通システムと言う名前で呼ばれており、東京の「ゆりかもめ」、神戸の「ポートライナー」等々、古くから各地でその姿を見ることができます。
中国のAPMとしては、広州地下鉄のAPM線と北京空港のシャトルが知られてますが、いずれも小規模なものでした。今回開業した浦江線は全長6.7kmに及ぶ本格的なシステムです。

上海市閔行区三魯公路, 2018/7/3

Google Mapsの上に、上海APM・浦江線の路線図を赤線で書き込みました。浦江線は地下鉄8号線の終点、沈杜公路駅から出発し、全線高架で閔行区の汇臻路(Huizhen Lu)に至る路線です。ガイドウェイの付いたコンクリートの道床をゴムタイヤで走行しますが、地下鉄の1路線という扱いです。

※始発の沈杜公路は以前、航天博物館という駅名でした。航空や宇宙に関する博物館の建設計画があり、完成を先取りして駅名にしました。しかしいつまで経っても博物館は出来ず、とうとう駅名も変更されてしまいました。

Akado Primary School, Toneri Liner, 2017/11/18		Japanese APMs 本題に入る前に、日本のAPM・いわゆる新交通システムの例を少しだけご紹介します。いずれも無人運転です。 ←暮里・舎人(とねり)ライナー東京の日暮里と見沼代親水公園を結んでいます。
Kansai Airport Wing Shuttle (ウイングシャトル) 関西国際空港で、出入国検査場と南北の出発ゲート間の移動に使う無人運転システムです。 2010/7/22		Marine Park Yard, Rokko Liner (六甲ライナー) 神戸・六甲アイランドの島内アクセス線です。ゴムタイヤが見えるように、車庫で撮影しました。 2017/7/22

		Shendu Highway APM線の始発駅、沈杜公路駅に到着する地下鉄8号線をホームから撮影しました。車両は長春軌道客車製のAC15型です。
		地下鉄8号線の南端区間、芦恒路～沈杜公路は高架区間になっています。写真は終点の沈杜公路駅ホームで、採光を考えた大きな屋根が特徴です。 APM浦江線は左奥の別ホームから出発します。
		お待たせしました。ここからが本題です。 APM浦江線は、上海申通地鉄集団と仏Keolis(ケオリ社)との合弁による申凯公共交通運営会社によって建設、運営されています。使われている車両は、ボンバルディアのInnovia APM300型、4両1組で11編成があります。
		沈杜公路の構内で、折返し中のAPM300です。その形から「草魚」の愛称が付いています。日本の車両と比較するとやや大きな車体のように見受けられますが、わずか2軸のゴム車輪が支えています。 ※草魚(ソウギョ)：淡水魚の一種で、鯉に似ていますが口髭がありません。

		APMの車両が沈杜公路駅のホームに入って来るところです。上の写真と比べると、進路の分岐や合流のしくみが分かります。一般の鉄道レールに比べて、かなり大がかりな設備が必要になります。
		APM300の車内です。車両断面が丸くなっていて、少々圧迫感があります。これは「草魚」のデザインに起因するもので、全線高架を走る当線では丸くする必要はなかったと思われます。

		Sanlu Highway 沈杜公路を出て最初の駅、三魯公路駅から見た風景です。背景に石炭火力発電所の大きな冷却塔が見えますが、これは遠く黄浦江を越えた西岸に位置します。
		三魯公路駅のホームです。地下鉄と同様の設備があり、立派なホームドアが設置されています。
		ホームドア越しに反対側ホームに停車中の車両を見ています。車両のドア幅が通常の地下鉄より広く設計されているため、ホームドアの幅も広くなっています。
		路盤の構造を覗いてみました。中央に案内軌条が設置され、両脇にゴムタイヤが載る軌道があります。日本のシステムでは、案内軌条が側面の壁に付いている構造がほとんどなので、大変すっきりしています。右にあるS字状の曲線レールは、切り替えによって渡り線を構成する設備です。 ※千葉県佐倉市にある山万ユーカリが丘線が、現存する日本で唯一の中央に案内軌条を持つシステムです。
		タイヤ部分を拡大してみました。残念ながら案内車輪の構造は見ることが出来ませんでした。
		先頭車の車内です。APMの大きな特徴は、無人運転なので、運転台がなく、運転士も居ません。

「小皇帝」のために特等席が解放されました。一人っ子政策は終了しましたが、子供は国の宝ですから、大切にされます。

		Huizhen Lu 終点の汇臻路です。野原の中に突然現れた住宅地で、駅前にはマンションが林立しています。
		浦江線APMは元々地下鉄8号線を延長する計画でした。都市計画上の街の規模に合わせてAPMに変更したものと思われますが、試験的な意味があるのかも知れません。いずれにしても新種の鉄道が出現して、中国を訪問する楽しさが増えました。当局に感謝です。最後までご覧頂き、ありがとうございました。ご意見、ご感想はコチラ↓へお願いします。