名古屋ガイドウェイバス

撮影: 2016/5, 制作: 2023/10

我が国における本格的なBRT、名古屋ガイドウェイバス・ゆとりーとラインをご紹介します。高架上に造られた専用の軌道を、案内車輪でガイドされたバスが走るユニークなシステムです。このため車体はバスですが、路線は鉄道に分類されています。高架道路は名古屋市が、設備と車両は名古屋ガイドウェイバスがそれぞれ保有し、運行は名古屋市交通局が担当しています。

小幡緑地の坂道を上るガイドウェイバス, 2016/5/8

名古屋ガイドウェイバスはJR中央本線/ 名鉄瀬戸線のターミナルである大曽根と守山区小幡(おばた)緑地の間、6.5kmを結んでいます。名古屋市守山区の鉄道空白地帯を埋める形で、2001年3月23日に開業しました。大曽根～小幡緑地は高架に造られた専用敷を通り、その先は一般道に下りて通常のバスとして走ります。

		出発点の大曽根駅です。高架の上にある駅舎まで、階段もしくはエスカレータで上ります。 2016/5/8
		階段の上に改札口がありますので、いかにも鉄道という感じがします。乗り場はこの上の3階にあります。 通常、この改札口は自由に通り抜けて、車内で検札やカード決済をおこないます。ラッシュ時に到着車両が遅れた場合のみ、車内での運賃収受をせずに、この改札口でカードリーダを持った駅員が対応します。乗客を速やかに下車させるためです。
		大曽根駅に掲示してある時刻表と運賃表です。大曽根～小幡緑地、中志段味、高蔵寺への本線と、志段味サイエンスパーク機を経由する支線系統があります。 朝夕は頻繁運転、日中も10分ヘッドでダイヤが組まれています。
		大曽根駅に進入するガイドウェイバスです。前輪の前に黄色の小さな案内車輪が見えます。このようにカーブ区間では、外側の案内車輪が車体をガイドしています。
		大曽根には高架の上に広い駐車スペースがあります。到着したバスは、乗客を降ろした後にここで向きを変え、再びガイドレールの区間に進入して、発車の準備をします。
		乗車ホームです。行き先ごとに乗り場が分かれています。
		ステップの下に見えるのが案内車輪です。回転しながら案内レールをトレースします。 駅では車両の乗車口とホームの間隔を常に最小限に制御することができます。また、鉄道と同じように、すれ違いに必要な最低限の幅員で高架道路を建設することができます。
		こちらは案内レールです。継ぎ目の部分では、熱膨張を考慮して伸縮する設計になっています。
		いよいよ出発です。ガイドウェイ区間での操舵は完全に自動ですので、運転士はハンドルに触れず、膝の上に手を置いています。鉄道と同じく、アクセルとブレーキのみ操作します。 最高速度は60km/h、渋滞する一般道を横目に快走します。
		大きくカーブを曲がって、砂田橋駅に侵入する上り便です。駅舎の屋根はどの駅もアーチ状に統一されたデザインになっています。
		丘陵地帯を越えて、川村駅に進入する上り便を対向車から撮影しました。専用道から見た沿線風景は、モノレールに乗った時のイメージによく似ています。

高架の専用道区間の終点、小幡緑地駅です。		どの駅にも、分かりやすい案内表示があります。
高架から下りてきた所です。案内車輪を格納して、走行モードを切り替えると、ゲートが開きます。		ここから先は一般道になり、通常のバスとして走行します。

		開業から15年後の撮影なので、車両は2世代目に代替わりしていました。営業車は日野自動車のLJG-HU8JLG、リフト付のハイブリッド車に統一されています。 尚、ガイドウェイバスは鉄道扱いなので、メーカー形式とは別にGB-2110という称号を持っています。また、G-で始まる社番が付いています。 2016/5/8, 竜泉寺口
		高架の小幡緑地駅の目の前にあるのが、一般道の竜泉寺口バス停(上掲)で、その1つ北にあるのが竜泉寺バス停です。お洒落な上屋根が付いています。 毎年、節分の日には、ここまで臨時便が運転されます。
		龍泉寺の多宝塔と本堂です。伝教大師によって開かれた古刹で、尾張四観音の一つとなっています。
		一般道(県道15号)をしばらく進むと中志段味に至ります。ここには駐泊所があって、待機しているバスを見ることが出来ます。 ※2023年1月、中志段味の1つ北にある藤塚にバスセンターが造られました。藤塚は志段味バス広場と改称され、中志段味止めの系統が延長されました。現在この敷地は、スーパーバローの一部になっています。
		上掲の駐泊所から出庫して、県道のバス停に向かうところです。この便は志段味サイエンスパークを経由する支線系統ですが、大曽根まで直通します。
		中志段味のバス停に掲げられている路線図です。高架区間が一段高いデザインになっています。よく見ると支線系統に印場行きのヒゲ線が読み取れます。これは運行委託先の名古屋市交通局大森車庫への入出庫系統で、朝夕4往復のみの運転です。実際に客扱いをしますが、大曽根駅の系統図やホームページにも記載がなく、ここまで来て初めてその存在を知りました。
		JR中央本線の高蔵寺駅です。小幡緑地から一般道を約8km走った先にある終点になります。ここだけ名古屋市内から離れて春日井市になります。 最後までご覧頂き、ありがとうございました。ご意見、ご感想はコチラ↓へお願いします。

名古屋ガイドウェイバスには、①専用のレーンがあり、②ホームのある駅舎があり、③頻繁な運行ダイヤが組まれ、④特別な車両が存在します。即ち、BRTの条件を全て満たしている日本で唯一の中運量交通機関です。 単なる鉄道廃止代替路線のことをBRTと称している事業者がいますが、用語は正しく使いたいものです。